マリアージュ アユと獺祭

北アルプスの渓谷を源流とする故郷糸魚川の河川は美しい。

この季節川筋には釣人がアユを求めて入る。

子供のころ父に連れられてよくこの川に来た。

父は投網、子供たちは浅瀬にアユを追い込んで素手で捕まえた。

アユはキュウリの匂いがした。

このフレッシュな香りはどこからくるのか父に尋ねると、

川底の石の表面のミズゴケだとのこと。

よく見ていると、

石には幾筋ものアユが泳ぎながらミズゴケをこそぎ取った跡が無数についていた。

 

シェフはアユを皿に上げた。

カリカリの頭と骨は、海に下り急流を遡上してきた野生をうかがわせる。

ミズゴケの内臓は清流の主であったことを主張する苦いソースとなり、

銀色の身は野菜の香りを伴い首座につく。

ワインでよしお酒でよし、最高のマリアージュをひそかに楽しむ夜がたまにあっていいものだ。

なんだか川のせせらぎが聞こえてくるようだ。